和菓子トラベル

るり農園のこと 第二話

その日はこの原稿のためにいつもに増してお話をゆっくり伺わねばなりません。けれどインタ ビューが始まっても光治さんはじっと座っていません。こちらの質問に大きな声で答えながら、あちこちの袋を開け、黒豆や小豆やらを取り出して見せてくださり、それから裏の水場で種取り用のトマトを見せてくださり、これも種取り用のカサカサになったインゲンを見せてくださいます。

光治さんは代々種取りが当たり前だとおっしゃいます。ご自分の畑で取れた種は、また次の年も良く育つし、そうでないとご自分の作物の味にならないのだそうです。新しいものを作る時には種を買われますが、ご自分の納得いく味になるまで何年か畑に馴染ませるのだそう。

「そのやり方でお商売的にはどうですか?」と伺うと、実に明るくキッパリと「駄目でした!」 とのお返事。思わず笑ってしまったのでした。
「儲けよと思たら、規格を揃えてダーっと同じもんこさえたら、そらその方がええけどな、それでは面白ないねん。『おいしいなあ』と思てくれる人がこうして買いに来てくれるやろ。ほんで顔見て話して。それが僕の商売やねん。小豆売ったら、次来てくれる時に饅頭こしらえて持 ってきてくれたりするやろ。ほんなら、もうそれが嬉しいねん。自分の作ったものをお客さん が手を加えて、おいしくしてくれるのが見えるやろ。それで元気をいただくねん」

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第一話を読む  さくいん


取材・文  井崎敦子(いざき あつこ)
10年前、同志社大学大学院社会人講座・有機農業塾に入塾、長澤源一氏の指導を受ける。現在も大原で小さな畑を耕しつつ、左京区にオーガニック八百屋「スコップ・アンド・ホー」をオープン。今秋からは仲間とともに京都ファーマーズマーケットを立ち上げる。美味しいものを通じてつながってゆくご縁が嬉しい日々。