光治さんは数十年の農家人生の中で一度も慣行農法をしたことがないそうです。「昔ながらのやり方を守りたかっただけや」とおっしゃいます。「農薬使わはる人はそれがええと思てやってはるんやから、そらそれでええやんか。僕は昔ながらのやり方を守ってたらたまたまこうなった だけやねん」。
陽気になにごとも楽しんでいらっしゃる光治さん。
この日、ご一緒した和菓子作家の一祥さんは「光治さんの小豆はピカイチにおいしい」とおっしゃいます。丹波という気候風土、そして「この土地は水が枯れたことない。綺麗な水をたっぷり使えるやろ。お天気と土と綺麗な水、ほんで毎日様子を見てやること、それでええねん。台風来て全部あかんようになったら、『堪忍やったで』言うて声かけてな、種だけ取るねん。あかんかったらまた来年や」、そんな風に育てられた小豆たちがピカイチの味になります。
最後に畑に案内をしてもらい、これから収穫を待つ小豆を見せてもらいました。「これ、これ、見せたかったんや」と光治さんが指差す先、鞘を剥くと中には白いお豆が可愛らしい姿で並んでいます。去年、一緒に伺った時に一祥さんが欲しいなあ、とつぶやいていた白小豆を、早速育ててくれていたのです。
無農薬有機栽培も種継も簡単なことではありません。その手間隙を惜しまず「昔ながらのやり方でやっているだけ」と事も無げにおっしゃる光治さん。朗らかに、他人を批判せず楽しんで農業をされている。
帰りには山盛りの枝豆と掘り始めのサツマイモをお土産にいただきました。
ピカイチの小豆の収穫がもうすぐ始まります。
取材・文 井崎敦子(いざき あつこ)
10年前、同志社大学大学院社会人講座・有機農業塾に入塾、長澤源一氏の指導を受ける。現在も大原で小さな畑を耕しつつ、左京区にオーガニック八百屋「スコップ・アンド・ホー」をオープン。今秋からは仲間とともに京都ファーマーズマーケットを立ち上げる。美味しいものを通じてつながってゆくご縁が嬉しい日々。